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北斗金属工業では、さまざまな防水・止水製品の開発を通して現場のニーズに応えてきました。製品が誕生するきっかけとなった出来事や、開発時のエピソードを、当社代表の話を交えてご紹介します。
昭和45年、菅野征人は当社の前身である北斗螺子工業を設立しました。工業用ネジの製造・販売を行う傍ら、昭和50年代後半からはパソコンディスプレイ用精密電子部品の分野にも進出。多様化するコンピューター市場を相手に、優れた製品を数多く開発します。なかでも国内の大手メーカーと共同開発したプレス加工製品は、当社の成長を支えるものでした。
そして時代が平成に入ると、当社はさらに担当分野の枠を拡大。製造加工技術で培ったノウハウをもとに、建築業界への転身を図りました。

当社がとくに興味を持ったのは、地下構造物に特化した世界でした。現場では止水・防水に対するニーズが多いのに反して、競合が少ないことを知り、止水製品の商品化に乗り出します。
できあがった製品を携えた菅野は、とある工事現場の所長を訪問します。そのとき、型枠崩壊事故現場に遭遇したのでした。
――当社の止水材を手に取るなり、現場所長から「止水材を作るのなら、今より頑丈な型枠補強用アンカーボルトは作れないものか?」と相談されました。
地下コンクリート構造物を建造する際、生コンを支える型枠には非常に大きな側圧がかかります。もしも側圧に耐え切れず型枠が崩壊(パンク)してしまうと、凝固前の生コンが一気に流れ出て、ときには人命にかかわるほどの甚大な被害をもたらします。作業員たちは徹夜で現場を清掃して、また最初から型枠を作り直さなければなりません。もちろん工期にも大幅な遅れが出ます。
――電子部品業界にいた頃から金属加工を手がけていたものですから、その経験と知識を応用すれば現場の要望に応えられるのでは…。そう思ったんです。
菅野はすぐさま、型枠補強用アンカーボルトの「必要条件」をヒアリングし、会社に戻りました。
型枠補強用アンカーボルトに必要な条件は、3点ありました。
アンカーボルトの形状はおおかた既成のものでいく予定だったので、素材選定と施工性アップの研究に多くの時間と労力をかけました。素材については、早い段階から鋼を主体としたものを使うことが決定していたので、3トンもの強度を出すべく焼入れと焼き戻しを何度となく繰り返しました。
――焼入れと焼き戻しの条件を変えながら、何度も試作しました。「いかにして3トンの引張強度を出すか」。寝ても覚めてもそればかり考えていましたよ(笑)。
ただ硬いだけでは脆く、横からの力ですぐに破断してしまいます。硬さがありながら横からの力をある程度吸収するためには、柔軟性も持ち合わせたものに仕上げなければなりません。3トンの引張強度を出すには、絶妙な焼き戻しの条件があるはずです。
――しかし、なかなか3000kgfをクリアする焼き戻し温度が見つからない…。素材の選定が間違っていたのかと思い始めていました。
ある日、何気なく雑誌をながめていた菅野は、新幹線のレールについての特集を目にします。700トンもの車体が時速300kmにもなるスピードで通過しても、破断と磨耗を起こしにくい特殊鋼材。そこにヒントがあるかもしれない。
早速、新幹線のレールに使われている特殊鋼材の研究に取り掛かります。目的の鋼材にたどりつくために、業界内のあらゆる専門書を読み漁ります。程なく配合の理想的な材料を発見しました。入手した鋼材に焼入れを施して、さらに試行を繰り返します。
あわせて、セパレータ調整パイプを一体で取り付ける方式を採用し、施工性を大幅に向上させました。
こうして平成8年、引張強度3000kgfをクリアするアンカーボルト「スクリュービット」が誕生します。制作開始から、実に18カ月もの歳月が経っていました。
――今までになく強靭なアンカーボルトなのだから、現場ではウケがいいに違いないと思っていたんですが…。
現場に持ち込むと反応はいまひとつ。従来製品よりも格段に引張強度が向上したため、かえって「3,000kgfなんてありえない」という印象を与えてしまったのです。そこで引張強度の試験を行い、スクリュービットの性能を確認していただくことにしました。
現場に機材を持ち込み、H鋼にスクリュービットを打設。そこに引張試験機をつなげ、油圧ポンプで力を加えていきます。およそ2トンの荷重でセパレータが破断。スクリュービットはびくともしません。材料を換え、菅野はさらに加重していきます。作業員たちが見守るなか、手元の荷重計はついに3トンの目盛りに到達。

――まわりを囲んでいた作業員たちから「これはすごい!」「ぜひ使いたい」という声が上がりました。それを聞いて、私もひどく興奮したことを覚えています。
その後、建設会社から正式に「スクリュービット」採用の知らせを聞き、菅野はようやく溜飲を下げることができました。その後、スクリュービットの評判は瞬く間に建設業界に広まり、次々と受注の連絡が舞い込むようになります。平成10年に「スクリュービット」は特許を取得。当社の歴史に輝く、空前の大ヒット商品になりました。
その後も当社は菅野の指揮のもと、建築用金具を次々に世に送り出していきます。
コンクリート打継ぎ部を止水する「アクアシャット」や、コンクリート躯体のセパレータ部用止水材「ホクトリング」。そして「スクリュービット」のノウハウを詰め込んだ、あと施工アンカーボルト「イスピーアンカー」を開発します。それらの製品はすべて当社の理念である「現場のニーズにもとづいた製品づくり」を実践したもの。建築現場に足を運んでは、所長をはじめ作業員たちからさまざまな要求や苦労、あるいはアイデアをヒアリングし、新製品の企画に反映しています。

また、開発した製品群は特許を取得し、独自の技術やアイデアを当社の知的財産として登録・保護しています。
――自社のノウハウは大切な財産ですし、次の製品づくりにも応用していきたいですからね。
さらに平成12年には、大深度地下工事における漏水を防ぐために新たな工法を考案。自社製品を組み合わせ、大きな水圧にも耐えられる止水工法として多くの施工業者様から高い評価をいただいています。
当社が建築業界に移ってから、10年余りが経ちました。数々の製品を開発してきた当社は、これからも一層の成長を果たすべく、新たな試みをつづけていきます。その足がかりとして、当社が開発してきた止水・防水材を全国区でお使いいただけるよう、社内プロジェクトを構築。国土交通省が運用するNETISにも製品登録し、現在、全国の皆様からのニーズに応えていく体制を整えつつあります。